Institution for a Global Society(IGS)

【実録・HRケーススタディ】AI導入後に「活用が個人任せ」になる組織でHRBPは何をすべきか——タスク分解で空中戦を終わらせた実例(2026年8月)

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実際の支援事例をもとにストーリー形式でお届けします。
登場する企業名・人物名は仮名とし、数値・規模感も実態を反映しつつ一部調整しています。


本シリーズ「実録・HRケーススタディ」では、IGSの営業担当が日々向き合っている実際の企業相談をもとに、人事と経営のあいだで何が起きているのか、どこで判断や施策が止まりやすいのか、それをどう整理し、前に進めているのかをお伝えしています。

今回は、全社AI導入後も活用が個人任せになり、現場との対話が「空中戦」に陥っていたあるHRBPが、タスク分解というアプローチで突破口を開いた実例をお届けします。

「AIを活用してください」——現場が動かない本当の理由

「全社への最新AIエージェント基盤の導入が完了しました。各部門におかれましては、業務効率化と生産性向上に向けた積極的な活用をお願いいたします」

社内ポータルサイトに掲載された経営陣からのメッセージを見つめながら、ある産業機器メーカーの人事室でHRBP(HRビジネスパートナー)を務める佐藤は、静かな会議室で深く息を吐いた。

この会社は、時価総額約1,000億円規模のB2B産業機器メーカーだ。
長年にわたり高品質なコンポーネントや産業用装置を市場に供給し、着実な信頼を築いてきた。

しかし近年、「売り切り型」のビジネスモデルから、顧客の工場全体の自動化や生産性向上を支援する「ソリューション提案型」ビジネスへの転換が経営命題となっていた。

DX推進部門の尽力により、全社的なAI活用のインフラ環境は整った。

しかし、現場の実情は一筋縄ではいかなかった。

一部のITリテラシーが高い若手や企画担当者が個人的に使いこなす一方で、事業の要である営業部門や技術サービス部門の多くからは、

「日常業務が多忙すぎて、AIを検討する余裕がない」
「自分の仕事のどこにAIが使えるのかイメージが湧かない」

という困惑の声が上がっていた。

結果として起きていたのは、AI活用が完全に「個人任せ」になってしまうという現象だった。

活用度合いによって個人の業務時間に差が出始める一方で、組織全体としての効率化や、ソリューション提案へのシフトという本来の経営目的に対しては、明確な成果が見えにくい状況が続いていた。

HRBPの壁——現場の「ブラックボックス」と空中戦

佐藤が果たすべきミッションは明確だった。

現場の業務の中からAIで代替可能な部分を整理・効率化し、そこで生まれた時間的な余力を、顧客の課題を深く汲み取る「ソリューション提案」というコア業務へ投入すること。

そして、そのコア領域を担うための人材育成や採用戦略を、HRBPとして現場と一緒に推進していくことだ。

佐藤は営業部門のマネージャーである鈴木のもとを訪ね、変革に向けた対話を開始した。

「鈴木さん、今回のソリューションシフトに向けて、営業現場の業務効率化を進めたいと考えています。現在のお仕事の中で、AIを活用して自動化や時間短縮ができそうな部分はどこでしょうか」

そう切り出した佐藤に対し、鈴木は困惑と申し訳なさが入り混じった表情を浮かべた。

「佐藤さん、お気持ちはよくわかります。ただ、私たちの仕事は単にカタログ製品を売るだけではないんです。顧客ごとに異なる設備環境に合わせて仕様を検討し、技術資料を作り、納期や価格の調整を行う……一つひとつの案件で前提条件が違うため、一言で『ここをAIに任せる』と言われても切り離せないのが実情ですよ」

お互いに会社を良くしたいという思いを持ちながらも、具体的な業務の実態に踏み込めないまま交わされる対話は、いつも平行線をたどっていた。

現場の業務がAIで効率化できるという人事の理想と、業務が個別化・複雑化しており安易に切り出せないという現場の実感。

この「空中戦」に、佐藤は行き詰まりを感じていた。

突破口——「職種」ではなく「タスクの束」で捉え直す

どうすれば現場と同じ目線に立ち、建設的な議論のテーブルをつくることができるのか。

情報収集を重ねていた佐藤は、IGS(Institution for a Global Society株式会社)が提供する「GROW-AX」というソリューションに出会った。

これまでの対話が空中戦になっていた根本的な理由は、「営業職」「技術職」といった大括りの「職種」のまま議論をしようとしていた点にあった。

同じ「営業職」という名称であっても、行っている業務の中身には、市場や競合のデータを調べる作業もあれば、顧客の経営課題をヒアリングする高度な対話もある。

職種という曖昧な枠組みのまま「AI活用」を語っても、解像度が低すぎて具体的に何をどう変えるべきかが見えてこないのは当然だった。

「GROW-AX」が提唱していたのは、職種という概念を一旦解きほぐし、仕事を「タスクの束」として捉え直すというアプローチだった。

職務を実務レベルの解像度(1タスク=1目的)まで細かく分解し、それぞれのタスクに対して「AI代替可能性」と「人間の関与度」を切り分けていく。

「これだ。職種ではなくタスクに分解すれば、ブラックボックス化していた現場の業務を共有可能なデータに変換できる。そうすれば、鈴木さんたち現場のキーマンと具体的な対話ができるはずだ」

経営戦略の「翻訳」と、AI×人の境界線づくり

開催されたワークショップには、人事室のメンバーだけでなく、営業マネージャーの鈴木をはじめとする現場のリーダー層、そしてDX推進部門の担当者が一堂に会した。

プロジェクトの最初のステップは、単なる「現在の業務の棚卸し」ではなかった。

「売り切り型からソリューション提案型ビジネスへの転換」という経営戦略をスタート地点とし、それを実現するために「今後どのようなタスクが必要になるか」を定義することから始まった。

IGSの専門的なナレッジとAI生成を活用しながら、営業職の業務が約30個の具体的な「タスク」へと分解されていく。

・顧客の業界動向や財務データの収集・要約
・過去の類似案件における製品仕様比較表の作成
・顧客の工場における潜在課題のヒアリングと仮説構築
・技術部門との連携によるソリューション構成案の作成
・購買担当者や工場長との利害調整および最終交渉

それぞれのタスクについて「AIの潜在的な代替可能性」と「現場での実際の利用度」という2軸で評価を行い、結果を4象限のマップとして可視化した。

特に注目を集めたのは、「AIによる代替可能性が高いにもかかわらず、現場ではまだ手作業で行われている領域」——いわゆる「お宝領域」の存在だった。

例えば、「競合製品との仕様比較資料の作成」や「過去の導入事例データの整理」といったタスクは、AIを活用すればわずかな時間で高品質なドラフトを作成できる可能性があるにもかかわらず、個々の営業担当者が時間をかけて手作業で作成していた。

経営戦略に照らし合わせたとき、本当に時間をかけるべき「コア領域」は、データ集計や資料作成ではなく、「顧客の現場に入り込んで潜在課題を聞き出すこと」や「複雑な要件に対して最適なソリューションを合意形成すること」である点が、データによって明確に示された。

ブループリントが拓く「地上戦」——現場とDX部門が手を取り合う日

「GROW-AX」によって作成された「タスク構造マップ」と「AIバックロード診断レポート」は、営業現場における業務改革の確かな「ブループリント(青写真)」となった。

診断レポートを見つめながら、鈴木が身を乗り出す。

「佐藤さん、こうしてタスクとして並べられると、すごく納得がいきます。この『提案書の初期ドラフト作成』や『導入効果の試算シミュレーション』のタスクは、確かにAIに任せられそうですね。ここをAIで標準化できれば、営業一人が資料作成に費やしていた時間を週に数時間は削減できます」

「そして、そこで浮いた時間を使って、こちらの『顧客の潜在課題の深掘り』や『工場長との関係構築』というコアタスクにじっくり時間を使いたい。これこそが、私たちが目指すべきソリューション営業の姿です」

同席していたDX推進部門の担当者も頷いた。

「現場のどのタスクにAIを適用すればいいのかが明確になりました。この『仕様比較表の作成』と『提案書ドラフト作成』に特化したAIプロンプトのテンプレートやエージェント環境を優先して整備します」

かつて抽象的な理念ばかりが交わされていた空中戦は終わりを告げた。

タスクという客観的なデータに基づき、人事・現場・DX部門が「どこをAIに任せ、どこに人が注力し、どんな支援が必要か」を具体化する、地に足の着いた「地上戦」の議論が始まったのだ。

「GROW360+」で「コア能力」を見極める——データドリブンな人材戦略の完結

業務のタスク分解によって「人が担うべきコアタスク」が明確になったことで、佐藤のHRBPとしての仕事は次のステップへと進んだ。

AI時代において人間が担うべきコアタスク——

「複雑な状況下での意思決定」
「多様な関係者との合意形成」
「潜在的な課題の発見」

などを遂行するためには、単なる製品知識だけでなく、高度な行動特性(コンピテンシー)が求められる。

しかし、こうした定性的な能力を従来の評価や面接で見極めようとすると、評価者の好みや思い込みといった「評価バイアス」が入り込みやすいという課題があった。

そこで佐藤が導入したのが、「GROW360+」だった。

「GROW360+」は、多面評価(360度評価)に、特許技術である「測定バイアス補正」を掛け合わせることで、評価者ごとの評価の甘辛(甘い・厳しい)や基準のブレを自動的に是正し、対象者の気質(変わりにくい特性)やコンピテンシーを定量化するツールだ。

「GROW-AX」によって、「経営戦略に基づき、これから強化すべきコアタスクと必要なコンピテンシー」を定義(設計)する。

そして「GROW360+」を用いて、社員の現在の能力や強み・課題を客観的データとして測定・可視化する。

この2つが組み合わさったことで、人事施策の根拠はデータに裏付けられたものへと変わった。

「自社のソリューション営業として活躍するために必要な行動特性」と「個々の社員の現在の能力」のギャップが数値として可視化されたため、育成プログラムの策定や適材適所の人員配置、採用基準のアップデートまでを一気通貫で推進できるようになった。

経営と現場をつなぐ、新しい人材マネジメントへ

プロジェクトの開始から数ヶ月が経過したこの会社では、営業現場におけるAI活用が着実に日常へ溶け込み始めていた。

定型的な資料作成や情報収集のタスクがAIへ移行されたことで、営業担当者が顧客のもとへ足を運び、対話に費やす時間は増加した。

現場からは

「顧客の現場で深い相談を受ける機会が増えた」
「仕事の本来の面白さを再実感している」

という声が届いている。

全社の人材ポートフォリオデータを眺めながら、佐藤は確かな手応えを感じていた。

AIエージェントをはじめとする先進テクノロジーの導入は、それ自体がゴールではない。

大切なのは、テクノロジーという道具を使って仕事をタスク単位で捉え直し、人間が担うべき「真の価値」を再定義することだ。

そして、そのコア領域で人が力を発揮できるよう、精確なデータに基づいて育成や配置を行うこと。

これこそが、AI時代において人事に求められる役割であり、経営と現場を架橋するHRBPの価値なのだと。


「AI導入後も活用が個人任せになっている」
「現場との対話が噛み合わず空中戦になっている」

そんな課題をお持ちの方は、ぜひ「GROW360+」のページをご覧ください。
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