

Institution for a Global Society(IGS)
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本シリーズ「実録・HRケーススタディ」では、IGSの営業担当が日々向き合っている実際の企業相談をもとに、人事と経営のあいだで何が起きているのか、どこで判断や施策が止まりやすいのか、それをどう整理し、前に進めているのかをお伝えしています。
今回は、全社AI導入後も活用が進まず、現場とDX部門が「お見合い状態」に陥っていたある企業が、「タスク分解」という共通言語を得ることで対話が変わった実例をお届けします。
実際の支援事例をもとにストーリー形式でお届けします。
登場する企業名・人物名は仮名とし、数値・規模感も実態を反映しつつ一部調整しています。
プライム市場に上場する、ある総合企業でDX推進を担当する東は、社内ポータルサイトのアクセス解析データを前に、深く息を吐き出した。
数ヶ月前、全社的な生産性向上という経営方針を受け、最新のAIプラットフォームの全社導入が完了した。
情報セキュリティ部門との調整を経て、「誰もが日常的に、安全にAIを活用できる環境」が整ったはずだった。
DX部門としては、事業部に対してプロンプト(指示文)の基礎を学ぶ研修を実施し、各部署で推進役となるエヴァンジェリストの育成にも注力してきた。
「現場の業務で何かAIでできることがあれば、いつでも相談してください。DX部門が全力でサポートします」
社内向けの発信で繰り返しそう呼びかけてきた。
しかし、相談窓口は静まり返っていた。
経営陣からは毎週の定例会議で「AI導入による生産性向上の具体的な成果は出ているのか」と進捗を求められる。
その一方で、現場から聞こえてくるのは「自分たちの業務でどう使えばいいのか、使い方を教えてほしい」という声ばかりだった。
環境は用意した。研修も行った。
それでも、思い描いていたような変革の波は、起きる気配がなかった。
なぜ、活用が進まないのか。
現状を打破するため、東は事業部門で実務を牽引する南に率直な意見交換の場を設けた。
「AIを活用して、現場の業務負荷を少しでも減らしたいと考えています。具体的な日常業務の中で、効率化できそうなアイデアはありませんか」
東の問いかけに対し、南は困ったような表情を浮かべた。
「現場としても、生産性を上げたいという思いは同じです。ただ、私たちはAIの仕組みや得意分野を完全に理解しているわけではありません。自分たちの複雑な実務のどこにAIが当てはまるのか、すぐには思いつかないんです。むしろ、技術の専門家であるDX部門から『こういう業務にはこんな風に使える』と具体的な活用案を出してもらえるとありがたいのですが」
DX部門はAIの機能やITの専門知識には長けている。
しかし、現場の細やかな業務プロセスや、顧客ごとに異なる対応の機微、イレギュラーへの対処法までは把握しきれていない。
現場は「効率化したいけれどAIがわからないから、DX部門から活用案を出してほしい」と待っている。
DX部門は「AI活用を支援したいけれど現場がわからないから、現場から活用案を出してほしい」と待っている。
互いに会社を良くしたいという思いは共通しているのに、見ている景色と専門性が違うために「お見合い状態」に陥り、双方にもやもやとしたジレンマだけが蓄積していく。
これが、活用が進まない大きな原因だった。
さらに、東の頭を悩ませる出来事が起きた。
AIを積極的に試し始めていた別のチームから、思いがけない報告が上がってきたのだ。
「AIを使える環境が整った結果、かえって業務負荷が上がってしまった」というのだ。
そのチームではこれまで、上司への進捗報告を5分程度の口頭でのすり合わせで済ませていた。
変化の激しい状況下で柔軟かつ迅速に対応するための、理にかなったコミュニケーションスタイルだった。
しかし、「せっかくAIがあるのだから」と、担当者がAIに情報を読み込ませて体裁の整った詳細な報告資料を作成するようになった。
結果として、資料作成そのものに手間がかかり、報告の場でも資料の読み合わせに時間を要するようになってしまった。
報告を受ける上司側も、詳細な資料を確認する負荷が増えてしまったという。
「AIを使えば、無条件に効率化するわけではない」
東はこの事例から重要な示唆を得た。
環境を整えるだけでなく、「何にAIを使い、何にはあえてAIを使わないか」を明確に判断する基準がなければ、良かれと思った行動が、かえって現場の負担を増やしてしまう可能性がある。
すれ違いと、予期せぬ業務増。これらの課題の根底にあるものは何なのか。
東が行き着いた答えは、「客観的な業務フローが存在していないこと」だった。
これまでの業務は、担当者の経験や感覚に基づく「暗黙の了解」によって回っていた。
しかし、AIという新しい要素をどこに組み込むかを議論するためには、その「暗黙の了解」を客観的なデータとして可視化する必要がある。
現場とDX部門の双方が同じものを見て、同じ認識で話せる「共通言語」が必要不可欠だったのだ。
この共通言語を作り出すためのソリューションとして東が着目したのが、「GROW360+(グロー・サンロクマル・プラス)」などを展開するIGS(Institution for a Global Society株式会社)が提供するタスク設計支援ツール「GROW-AX(グロー・エーエックス)」だった。
東は再び南とともに、「GROW-AX」を活用して現場業務の棚卸しに着手した。
システムに事業の方向性と役割を入力していくと、これまで「営業活動」や「顧客対応」といった大きな括りで捉えられていた業務が、数十個の具体的な「タスク」へと分解されていった。
画面上には、それぞれのタスクについて「AIによる代替可能性」と「人間の関与の必要性」が4象限のマトリクスで可視化された。
「なるほど……。過去のデータの収集や、初期のレポート整形といったタスクは、AIに任せられる領域として明確に出ていますね」
可視化されたデータを見ながら、南が頷く。
「一方で、顧客の潜在的なニーズを引き出す対話や、最終的な意思決定のサポートといったタスクは、私たちが集中すべきコア業務として残っています。こうしてタスクごとに分解されると、自分たちの仕事の全体像が手に取るようにわかります」
ブラックボックス化していた現場の業務が整理され、業務改善のための「共通言語」が生まれた瞬間だった。
共通言語という「地図」を手に入れたことで、東と南の対話は具体的で建設的な議論へと変わった。
「この『情報の下調べ』というタスクは、AIを使って自動化するプロセスを組み込みましょう。そうすれば、これまで口頭でスピーディに確認していた報告スタイルを変えることなく、必要なときだけAIがまとめた要点をさっと確認するだけで済むようになります」
東の提案に対し、南も具体的なアイデアを返す。
「その分、浮いた時間を顧客との対話や、新しい提案の準備というコアタスクに当てることができます。単に今の作業にAIを足すのではなく、私たちの業務プロセスそのものを、AIを前提とした形に見直していきましょう」
それはもはや「AIをどう使うか」という表層的な議論ではなかった。
事業部門ごとの実情に寄り添いながら、共通言語をもとに業務プロセスそのものをアップデートしていく、本質的な改善のプロセスだった。
それから数ヶ月後。
東のいるDX部門には、現場から次々と具体的な相談が舞い込むようになっていた。
「このタスク群はAIに任せたいので、最適なプロンプトの実装方法を一緒に考えてほしい」
「業務の地図」を手にした現場は、もはや受け身ではなかった。
自分たちの業務を俯瞰し、AIと人間の適切な役割分担を自らデザインし始めていたのだ。
経営陣が求めていた生産性向上の兆しも、数字として表れ始めていた。
AI環境の整備は、ゴールではなく新たな始まりに過ぎない。
タスク分解という共通言語がもたらしたのは、現場とDX部門の相互理解と、共に業務の未来を創り上げる足並みだった。
「AI環境は整ったが活用が進まない」
「現場とDX部門の対話が噛み合わない」
そんな課題をお持ちの方は、ぜひIGSにご相談ください。
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