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OJT担当者には「仕事ができる人」「面倒見がいい人」が選ばれがちですが、「仕事ができること」と「人を育てられること」は別の力です。
丁寧に教えるOJT担当者が、実は新人の自律性を奪っているケースもあれば、任せて育てるスタイルが不安の強い新人には負担になっているケースもあります。
OJT担当者選びで問うべきは「誰に任せるか」ではなく「どう育てる傾向があるか」——教え方の差を可視化する視点を解説します。
本シリーズ「実録・HRケーススタディ」では、IGSの営業担当が日々向き合っている実際の企業相談をもとに、人事と経営のあいだで何が起きているのか、どこで判断や施策が止まりやすいのか、それをどう整理し、前に進めているのかを、できるだけ具体的にお伝えしています。
4月に入社した新入社員が研修を終え、5月から6月にかけて現場配属されると、人事部には少しずつ現場の声が届き始めます。
「今年の新人は、少し受け身かもしれない」
「質問が少ないので、理解できているのか分からない」
「もう少し主体的に動いてほしい」
一方で、新入社員側に話を聞くと、別の声が出てくることがあります。
「何をどこまで聞いていいのか分からない」
「忙しそうで、声をかけるタイミングがない」
「一度教わったことをもう一度聞くと、できない人だと思われそう」
ここで見えてくるのは、OJT担当者の良し悪しではありません。
むしろ、多くのOJT担当者は、新人のためを思って丁寧に関わっています。
ただし、その関わり方が、新人の特性や状況と合っていない場合があります。
OJTで重要なのは、「誰が担当するか」だけではありません。
新人の状態に合わせて、どのように教え、どのように任せ、どのように見守るか。
この「教え方の差」を可視化することが、育成の属人化を防ぐ第一歩になります。
多くの企業では、OJT担当者に選ばれるのは、現場で信頼されている社員です。
仕事ができる人、面倒見がいい人、後輩から相談されやすい人、責任感を持って業務を進められる人。
こうした社員であれば、新人を任せても安心だと考えられます。
しかし、「仕事ができること」と「人を育てられること」は同じではありません。
たとえば、OJT担当者が新人のためを思い、丁寧に説明する。
失敗しないように細かく確認する。
必要な情報を早めに共有する。
判断の前に相談を促す。
こうした関わり方は、配属直後で不安が強い新人にとっては安心材料になります。
一方で、新人によっては、支援が手厚すぎることで自分で考える機会が少なくなったり、どこまで任されているのか分からなくなったりすることもあります。
つまり、丁寧な関わりが、そのまま育成効果につながるとは限りません。
OJTでは、「支援の量」だけでなく、「支援の仕方」と「支援のタイミング」が重要になります。
OJTがうまくいかないとき、「担当者の指導力が足りない」と捉えがちです。
しかし実際には、単純な能力不足ではなく、教え方の違いが影響していることも多くあります。
あるOJT担当者は、丁寧に説明することを重視します。
あるOJT担当者は、まず本人に考えさせることを重視します。
あるOJT担当者は、細かく進捗を確認します。
あるOJT担当者は、ある程度任せてからレビューします。
どれが正解というわけではありません。
新人の状態やタイプ、業務の難易度、職場の状況によって、適切な関わり方は変わります。
不安が強い新人に対して最初から大きく任せすぎると負荷が高くなります。
一方で、自律性の高い新人に対して細かく管理しすぎると、成長実感や主体性が下がることがあります。
重要なのは、担当者を「良い・悪い」で見ることではありません。
新人の特性と、OJT担当者の関わり方が合っているか。
新人の状態に応じて、支援の量やタイミングを調整できているか。
ここを見ることが重要です。
新入社員の配属や育成では、本人の適性や能力を確認する機会は比較的多くあります。
性格特性、思考の傾向、コミュニケーションの特徴、ストレスを感じやすい場面、強みや伸びしろ。
これらを把握することは、新人育成において重要です。
しかし、新人が現場で力を発揮できるかどうかは、本人の能力だけで決まるわけではありません。
どのような上司・先輩が関わるのか、どのくらいの頻度でフィードバックがあるのか、質問しやすい雰囲気があるのか、任せる範囲が明確になっているのか。
こうした受け入れ側の要素も、新人の立ち上がりに大きく影響します。
たとえば、現場から「主体性が低い」と見られている新人も、主体性を発揮しようとしていないのではなく、どこまで自分で判断してよいか分からないだけかもしれません。
「質問が少ない」と言われている新人も、意欲がないのではなく、質問するタイミングや聞き方に迷っているだけかもしれません。
新人側の特性だけを見ると、こうしたズレは見落とされます。
だからこそ、人事は新人を見るだけでなく、育てる側の行動も見ていく必要があります。
OJTの属人化を防ぐには、担当者の経験や人柄だけに頼らないことが重要です。
そのために有効なのが、OJT担当者側のコンピテンシーを可視化することです。
ここでいうコンピテンシーとは、単なる知識やスキルではなく、仕事や対人場面で実際に表れる行動特性を指します。
たとえば、次のような観点です。
・相手の理解度を観察できるか
・相手に合わせて説明の粒度を変えられるか
・一方的に教えるだけでなく、考えさせる問いを出せるか
・失敗を責めるのではなく、学習につなげられるか
・自分の教え方を振り返り、改善できるか
こうした観点は、本人の自己申告だけでは見えにくいものです。
「丁寧に教えている」と思っていても、新人から見ると細かすぎると感じられているかもしれません。
「自主性を尊重している」と思っていても、新人から見ると支援が足りないように感じられるかもしれません。
だからこそ、360度評価や能力測定のように、周囲からの見え方も含めて把握する仕組みが役立ちます。
「GROW360+」では、気質(生まれ持った特性)・コンピテンシー・スキルなどを多面的に把握できます。
こうした人材データを、新人本人だけでなく、OJT担当者側にも活用することで、育成のズレを見つけやすくなります。
OJTを改善するうえでは、新人とOJT担当者の「相性」を見ることも有効です。
ここでいう相性とは、好き嫌いや性格の合う・合わないではありません。
新人の特性と、OJT担当者の関わり方が合っているかどうかです。
不安が強く慎重に動くタイプの新人には、配属初期はこまめな確認や明確な期待値設定が有効です。
ただし、慣れてきた段階では、少しずつ任せる範囲を広げる必要があります。
自律性が高くまず自分で試したいタイプの新人には、細かい手順説明よりも、目的・制約条件・期待成果を明確に伝える方が合う場合があります。
質問が苦手な新人には、「いつでも聞いて」だけでは不十分です。
質問してよいタイミングや、相談時に伝えるべき情報の型を示すことで、行動しやすくなります。
重要なのは、新人をタイプ分けして固定的に見ることではありません。
また、OJT担当者を「向いている・向いていない」で判断することでもありません。
必要なのは、起こりやすいズレを事前に把握し、関わり方を調整することです。
OJT担当者の多くは、自分の通常業務を抱えながら新人育成を担っています。
教える時間を確保し、質問に対応し、レビューし、上司や人事にも状況を共有する。
これは簡単な役割ではありません。
にもかかわらず、OJTがうまくいかないと
「担当者の指導力が足りない」
「もっと面倒を見てほしい」
という話になりがちです。
しかし、本来はOJT担当者にも支援が必要です。
自分の育成スタイルを知る機会、新人の特性を理解するための情報、困ったときに相談できる上司や人事の関与、育成の進め方を振り返る場。
OJT担当者は、新人を育てる側であると同時に、育成者として成長する側でもあります。
新人だけでなく、OJT担当者も支援する。
この視点がないと、OJTはいつまでも個人の経験と努力に依存してしまいます。
5月から6月は、新入社員が現場に入り、OJTが本格的に始まる時期です。
この時期に新人の不安や停滞が見えたとき、本人の能力や姿勢だけに原因を求めるのは早計です。
見るべきなのは、新人だけではありません。
OJT担当者の教え方、新人との相性、支援の量やタイミング、フィードバックの仕方、職場として育成を支える仕組み。
これらが合っていなければ、どれだけ丁寧なOJTでも、新人にとっては負担になることがあります。
OJTを担当者任せにしない。
新人の不調を本人だけの問題にしない。
育てる側のコンピテンシーも可視化する。
その積み重ねが、属人的なOJTから、組織として再現性のある育成へとつながっていきます。
OJT担当者のコンピテンシー可視化や、新人育成の設計にご関心をお持ちの方は、
ぜひ「GROW360+」にご相談ください。
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