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この記事の要約

・「DX人材を育成せよ」という指令を受けた人事が注意すべきポイントを解説
・DX人材の定義やデジタル技術を身に着けさせる前に取り組むべきこととは?
・DXが停滞するケースから見えた、組織をトランスフォーメーションする重要性

 

目次 
 
1. ”DX人材を育成せよ” 突然の指令に戸惑う人事
2. DX人材育成で陥りやすい失敗とは?
3. そもそも、DXは経営戦略の問題である
4. では、人事はどこから着手すべきなのか?

1. ”DX人材を育成せよ” 突然の指令に戸惑う人事

あなたが、企業の人材開発担当だとしましょう。ある日、いきなり、「当社のDX人材育成はどうなっている?至急、案を出して欲しい」と上位から指示が降りてきます。

そろそろ来るかな、とは思っていたものの、いざ指示されると、さあ、困りました。DX推進部門も交えて、当社のDX人材とは?という定義をこの数カ月間、話し合い、レベル別の要件整理までは終えていたものの、具体的な育成施策となると、まだイメージがクリアではありません。

これまで付き合っていた研修会社は、DX人材育成に強いというイメージが全くなく、相談相手にならない。サイトを検索してみると、聞いたことのない会社から、DX人材だとか、デジタル人材だとか、AI人材だとか、色々なタイトルで教育コンテンツがたくさん、出ています。大手企業の導入実績も相当にある。トライアルで受講してみて、良ければ採用しようかな…。あるいは、まずは情報処理の基本知識について、資格取得を促すところから、社員のリテラシー強化に取り組もうか…。

 

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2. DX人材育成で陥りやすい失敗とは?

この数年、こうした状況が日本のそこかしこで、発生しているように思います。

そして、早くも、DX人材育成の失敗ということが、聞かれるようになりました。何をもって失敗か、というと、折角学んだ知識やスキルが、現場で殆ど活用できないというものです。

「教育コンテンツは社内に山のように存在しているのだが、学習しても使う場面がない、だから社員にこれ以上、勉強しろと言いづらくなってきた」という声が、リアルに聞こえてくるようになりました。

さらに悪い話は、集中的に学んだ人材が、”DX化で立ち遅れている”会社に見切りをつけて転職してしまうというものです。
昨今のDX人材育成によく見られる、典型的な特徴を、あげてみます。

1.人事担当者が、”DX人材とは何か”の議論に何ヶ月も費やす
2.デジタル技術を身に着けること=DX人材育成と考え、トレーニングから入る
3.アウトプットやアウトカムが不明瞭なまま、育成施策が進んでいく

これら1つ1つが悪いということではありません。そのように進めるのには尤もな理由が、それぞれの状況において、存在しています。

一方で、思い出されるのは、下記のような調査結果です。人材マネジメントの課題として、「人材戦略と経営戦略が紐づいていない」という回答が最も多く、3割を超える、というものです。

DX人材育成においても、同じ現象が発生していないでしょうか?

 

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(出所)パーソル総合研究所「タレント・マネジメントに関する実態調査」(HITO REPORT 2019年10月号)に基づき経済産業省が作成:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinteki_shihon/pdf/001_04_00.pdf

 

 

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3. そもそも、DXは経営戦略の問題である

DXが、単なるデジタル化ではないということは、既に多くの文献や専門家が指摘している通りです。よく引き合いに出される2018年の経済産業省の定義では、以下のように示されていました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

これを一言でまとめるなら、「DXとは、データとデジタル技術を前提としたイノベーション」と言えます。

つまり、DXとは経営戦略の問題であり、本来、人材育成も含む人材戦略は、経営戦略と分かちがたく、結びついているはずです。さらに言えば、DXは目的ではなく、デジタルとリアルが融合するSociety5.0時代を前提に、自社がヴィジョンを実現する手段でしかありません。

だとしたら、ヴィジョンや戦略から切り離されて、「DX人材育成」の定義や手段ばかりが議論されるのは、少し奇妙な光景ということになるかもしれません。

人材戦略で具体的に問われているのは、以下のようなことです。

 

☑人材の採用・育成・評価は、新しいヴィジョンやDXの実現が十分に意識されたものになっているか?
☑そもそも、新しいヴィジョンとDXの実現に向けて、人事部が積極的に関わっているか?
☑人材の能力や資質をデータ化したうえで、属人的ではなく客観的な判断ができるように、人材戦略に活用されているか?
☑マネジャーや管理職が果たすべき役割が、再定義されているか?
☑変化に対する人々の抵抗心に向き合い、積極的になれるような施策が打てているか?

 

とある企業の担当者の方は、「色々とDXに関するトレーニングを行ってきましたが、結局は、人々のマインドの問題で、知識やスキルを提供しただけでは、何も変わらないということが分かりました」と言われていました。

それも一理ありますが、では人材のマインドを変えるには、どうしたらよいのでしょうか。また、マインドを醸成するだけでは、先に述べたように、危機感を高めた人材が、動かない現場に業を煮やして、会社を去っていく、という事態になりかねません。

 

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4.では、人事はどこから着手すべきなのか?

IGSでは、「DXに強い人・組織づくり」のために、「DX×3P経営」のアプローチが重要だと考えています。イノベーションの世界的な権威である元ハーバード大学ビジネススクールの故クリステンセン教授のフレームワークである3P(Philosphy・People・Process)に、ソサエティ5.0の時代背景や、近年生まれた新しい知見を踏まえてアップデートしたものです。

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IGS代表 福原正大 著日本企業のポテンシャルを解き放つ―DX×3P経営(英治出版)より抜粋

 

つまりDXに必要な会社の変革とは、ヴィジョン・戦略と結びつけて、人材戦略、企業文化、プロセスなど全てを包括的に変えていく、全社的な取り組みなのです。だとすれば、「DX人材育成」は一部の担当者だけで取り扱うには、余りにも大き過ぎるテーマということになってしまいます。

しかし、マネジャーや担当者が意気消沈するには早く、全社的なトランスフォーメーションを、スタッフが影の仕掛け役となって前進させる事例を、筆者は複数、見てきました。経営層の話だから、自分は手を出せないと諦めてしまうのは早計です。

トランスフォーメーションには、シナリオが必要ですが、自社のカルチャーやキーパーソンを熟知するからこそ、描けるシナリオがあるはずです。
どこから着手するかは、企業によって違うでしょうが、もし1つだけ問いを立てるとしたら、

「あなたの会社の経営層は、DXに強い人・組織づくりに、コミットメントしているか?」

ということです。少なくともDX推進担当の役員や人事管掌の役員とは、DXとは全社的な取り組みであり、「ヴィジョン」や「人・組織」視点で進めるべきもの、という点をよく共有しておく必要があるでしょう。


DX人材育成を指示されたら、あなたがまずやるべきことは、トランスフォーメーションを先導する経営層のDX理解度を、確かめることかもしれません。少なくとも、プログラミング研修の比較検討ではないはずです。
今のDX人材育成の検討アプローチに、モヤモヤ感を感じているようでしたら、ぜひIGSにご相談ください。

 

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この記事の著者:

tsuchimotosan土本晃世
IGS(株)執行役員 HR事業部長/東京理科大学大学院イノベーション研究科 技術経営修士


東京外国語大学外国語学部を卒業後、総合電機メーカーに新卒入社、海外マーケティング、法人営業を経て2006年、人事系コンサルティング企業に入社。13年にわたり、製造業を中心とした大手企業向けの人材・組織開発プロジェクトに200件以上、携わる。

次世代経営人材の選抜と育成、人材開発体系再構築、評価制度改定、組織風土改革等のコンサルティング経験を経て、2019年よりInstitution for a Global Society株式会社に人事責任者として参画。2020年4月より国内HR事業の責任者として、日系大手企業のDX推進を人と組織の側面から支援するプロジェクトを多数担当している。
東京理科大学オープンカレッジ「人材マネジメント入門」講師。技術経営修士。


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