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京都大学特別セミナーレポート DX実現には、人と組織を変えること。

#データドリブン人事 #DX人事 #DX #デジタルトランスフォーメーション

新型コロナウイルスは既存の社会構造や産業、生活様式にまで大きなインパクトを与えています。オンラインを主軸にした新しい働き方や組織構造の変革が進む中、ポストコロナ社会におけるキー・イシューとして「デジタルトランスフォーメーション(DX)」はますます重要性を増しています。

そこで2020年9月15日、京都大学経営管理大学院とポラリス・キャピタル・グループの主催により、「イノベーションとDXが担うポストコロナ社会」と銘打ったセミナーがオンラインにて開催されました。

イノベーションとDXを担うベンチャー企業やベンチャーキャピタルがスピーカーとして登壇する中、人事データを活用した人事評価や育成、ジョブ型雇用の支援を行っているInstitution for a Global Society株式会社(以下IGS)の代表・福原もスピーカーの1人として講演を行いました。

今回は、本セミナーにおける福原の講演内容と、グループセッションの模様をレポートします。

 

 

■人材を変えなければ、変革はない

 

まず福原はIGSの事業内容として評価・教育サービスの「GROW」を紹介。「GROW」は、AI搭載エンジンによる社員や採用候補者のコンピテンシー、気質などを科学的に測定し、能力を可視化する企業向けサービス「GROW360」、360度コンピテンシー評価とAIの活用によって、生徒の能力と可能性、各教育活動の教育効果も可視化する文教向けサービス「AiGROW」、生徒のコンピテンシーを伸ばすための動画コンテンツやワークシートが月額定額で使い放題の「GROW Academy」などからなるサービスです。

特に「GROW360」については、人事から組織を変えていくために多くの大手企業で導入されており、人材配置や昇進・昇格の判断に使われています。

ここで福原は、日立制作所が国内グループ企業の全社員約16万人を対象にDXの基礎教育を実施したニュースを引き合いに出し、「人を変えなければ組織が変わらないという、強いメッセージだと読み取れます」と述べました。

「今や多くの企業がDXの戦略に取り組んでいます。デジタル企画部のような組織も増えてきました。ですが戦略を作っても、部署を作っても、それだけでは変化は起こりません。では何が問題なのでしょうか」(福原)

 

■VUCA時代には必要な人材要件も変わる

 

新型コロナウイルスによって社会変化のスピードはさらに加速し、未来を読むこともますます難しくなっています。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った「VUCA(ブーカ)」とは、将来が予測できない状況を指す言葉ですが、まさに今はVUCAの時代といえます。そしてVUCA時代には、市場における競争優位は急速に変化し、必要な人材像も変わっていきます。

「デジタル企画部などを作るだけでは変化は生まれません。また、日本企業は欧米企業と違って、合わない人材を解雇することも難しい。つまり必要な人材像を切り替え、人材に変化を起こしていくというチャレンジが必要になります」(福原)

しかし、そこで障壁になるのが人材の「感情」です。例えば、生活を便利にし、生産性を高めてくれるはずのAIが悪者のように認識されることもあります。将来的にはホワイトカラーの仕事の約4割がAIに置き換えられるというリサーチもありますが、デジタル化やAI化によって、自分の仕事が奪われる、という嫌悪感を持つ人も少なくないのです。

 

■データの分析力向上をどう活用するか

 

VUCA時代にあり、DXに対して嫌悪感を持つ人もいる中で、さまざまな企業において組織全体の再教育が重要なテーマとなっています。DXにはデータの活用が不可欠ですが、データについても考え方を刷新する必要があります。

「経営学のカーネギー学派も、人間の認知能力は限定的であるとして、データの必要性を昔から説いています。経営学ではデータを用いるのは当たり前です。人間に足りない能力をデジタルで補おうというのは自然な流れだといえます」(福原)

とはいえ、データの重要性自体は目新しい話ではなく、「昔からデータ収集には取り組んできた」という人事担当者も多いでしょう。しかしデータについても変化が生じていることを把握しておく必要があります。量・質・分析力という3つの変化です。

 

 

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

1つ目のデータ量については、低コストクラウドの登場によってデータ制限はほぼないといえるレベルにまでコストが下がりました。

2つ目のデータの質に関しては、必要な人材基準が変化する中で、バイアスを排除する必要があります。具体例としては、男性中心だった時代の過去のデータを活用した結果、女性への差別につながってしまったという問題などがありました。

そして3つ目の分析力においては、近年はディープラーニングや機械学習、自然言語処理などの発展がめざましく、中には脳科学を使った手法も生まれています。こうした先進的な分析力をいかに人事・組織改革に生かせるが重要になっていくでしょう。

 

■「DxGROW」と「STARプロジェクト」

例として、IGSによるDX人材の育成プログラム「DxGROW」では、Implicit Association Test(IAT)という認知心理学の手法を取り入れており、ある人材がDXに対してどれくらいの抵抗感を持っているのか、どのような潜在的バイアスを持っているかも測定可能です。さらには、学習履歴のフィードバックを利用し、DXへの前向きな感情を生成して、バイアスを軽減・除去していくこともできます。

 

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

IGSが慶應義塾大学と共同で開発している「STAR(Secure Transmission And Recording)プロジェクト」は、膨大な学習履歴を利用したスキル評価システムであり、統計分析スキルを持った人、量子コンピュータに詳しい人などを容易に探し出すことが可能です。とはいえ、ただ利便性のみを追求したわけではありません。個人情報を管理するためにブロックチェーンを用いて高い安全性を担保しています。就職活動や企業の人材採用など、さまざまなマッチングの場面で活用が可能です。

 

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

最後に福原は「さまざまな業界でDX変革が起きている中、もっともAI化やデータ活用が遅れていたのが人事領域でした。人を変え、組織を変え、そして変革を起こす時代に入ってきています」と締めくくりました。

 

■ベンチャーセッション〜教育分野のDXの難しさ

その後、ベンチャー企業とベンチャーキャピタルによる「ベンチャーセッション」にも福原は参加。ファシリテーションを務めたみやこキャピタルの岡橋氏から、以下のような質問が福原に寄せられました。

「新型コロナウイルスの影響で、生徒1人に1台のコンピュータを提供するGIGAスクール構想の推進が加速しているが、多くの諸外国ではとうの昔に実現していること。どのような課題があると感じていますか?」(岡橋氏)

IGSの教育動画教材「GROW Academy」は経産省のEdTech導入補助金に採択され、全国の市立の小中高に、コンピテンシーを伸ばすためのテクノロジー・サービスを提供しています。しかし福原によれば、GIGAスクール構想でハードウェアの問題点がクリアされたとしても、本当の問題は先生方のバイアスやデジタルへの嫌悪感といった感情の部分にあります。

「黒板に白墨で書いて生徒に教えるのが教師だと思い込んでいる方もいます。本当の課題は、メンタルのバリアをどう壊すかです」(福原)

教育分野にはステークホルダーが多く、機会の平等を絶対に担保する必要性もあるため、ビジネスとは違った難しさがあります。教育分野でDXを推進するには、国としてのさらなる支援を期待しながら、できることをやっていきたいと述べました。

 

■今後はオンライン教育にも注力していく

さらに、岡橋氏からは「現在の経営課題や、何か助けを求めていることは?」という問いも。それに対して福原は先述の「STARプロジェクト」に言及。

「金融機関などには導入していただいていますが、製造業やサービスセクターの事例が少ないのが現状です。ブロックチェーンを活用した人と企業のマッチングに興味がある方に、ぜひ紹介していただきたいと思います」(福原)

また、AIを用いた企業向けのオンライン教育にも注力していく展望を語り、EdTechを使った統計や機械学習などの社員教育に興味がある方も声をかけてほしいと述べました。

新型コロナウイルスによって社会構造が大きく変わりつつある今、DXは国として取り組むべき社会課題になりつつあります。IGSは、テクノロジーによってさまざまな企業や教育機関などのDXをお手伝いしたいと考えています。