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上場企業はHRレポートが必須に!? 加速する人事データ経営とジョブ型人事の最前線

#GROW360 #ピープルアナリティクス #ジョブ型 #データドリブン人事

 

2020年8月26日、「人事DX元年2020」をテーマに、慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授、日本CHRO協会理事、「HRテクノロジー大賞」審査委員長 岩本隆氏を招き、オンラインセミナーを開催しました。

基調講演では岩本氏が「COVID-19で加速する人材マネジメントにおけるテクノロジー活用」について講話。続いて、Institution for a Global Society株式会社(IGS)創業CEOの福原正大が「データドリブンな人事マネジメントはどう実現するか?」を話しました。

セミナーには様々な業界の人事部門担当者が約70名程度参加。今回は、このセミナーの模様をご紹介します。

 

●欧米で増える上場企業のHRレポート

岩本氏からは、人材マネジメントにおけるテクノロジー活用について、国内外の流れと事例を交えてお話しいただきました。

2010年代から始まったX-Techビジネスの中で、HRテクノロジー(HRTechまたはHRテック)とも言う)は特に成長率が高い市場となっています。

HRテクノロジーは生産性を上げるという目的があり、大きく2つの方法で活用されています。

  1. ヒトの仕事をテクノロジーに代替し、コストを下げる(生産性の分母を下げる)
  2. HRデータを活用し、パフォーマンスを高める(生産性の分子を上げる)

今後、社会は急速に変化し、人材マネジメントの成否が企業の業績に直結していくでしょう。新しいビジネスに取り組み成果をあげるには、日本企業によくある"金太郎飴型"から、一人ひとりを生かし組織の生産性を高める人材マネジメントへの変換が必要となってきます。

企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)化は世界中で始まっています。生産や物流、小売りなどの直接部門でのDX化は日本でも進んでいますが、人事や総務などの間接部門では遅れています。

ソフトウエア会社のオラクルは職場におけるAI活用状況について、2019年、世界各国を対象にした調査を行いました。回答した人は人事部門のリーダーが含まれているので結果に偏りがあるかもしれませんが、その結果は世界10か国中、日本は最下位でした。

(セミナー当日資料:岩本隆氏 作成)

中国やインドがAIを活用している様子は想像できると思います。岩本氏はブラジルの活用率の高さに注目しています。

ISOでも人材マネジメントの項目が加わっています。2011年以降に設定されたISO30400シリーズで、なかでもISO30414の「Human resource management - Guidelines for internal and external human capital reporting」は世界で議論されている項目です。

欧米ではISO30414導入の関心が高く、様々な機関が動き始めています。アジアでは、インドやパキスタン、東南アジアでも注目されています。

SEC(米国証券取引委員会)もISO30414に強い関心を示しており、2020年8月26日、米国に上場している企業にHR情報の投資家への報告を義務化することを発表しました。欧州ではHRレポートを毎年発表する企業も増えてきました。一方日本企業は、まだGRI(Global Reporting Initiative)サスティナビリティ・レポーティング・スタンダードに準拠するレベルです。(注:イメージとしてはISOは攻めのHR情報開示、GRIは守りのHR情報開示という違いがあります。)

では、ドイツ銀行のHRレポートの項目をご紹介します。

  1. Delivering on our strategy -the role of HR
  2. Creating a motivating and engaging working environment
  3. Benefits & Wellbeing
  4. Diversity & Inclusion
  5. Attracting talent
  6. Developing our people
  7. Developing our leaders
  8. Rewarding performance

HRレポートでは、従業員のモチベーション、健康、ダイバーシティーなど様々な項目から自社の状況を分析し、経営戦略と人材戦略を紹介しています。

 

●動き始めた日本のHRテクノロジー

日本でも徐々にではありますが、国や企業においてHRテクノロジーの動きが生まれてきています。2013年にKBS(慶應義塾大学ビジネススクール)岩本研究室で「人事・教育ビッグデータ分析研究会」が発足したことから始まり、2017年より始まった国が掲げる働き方改革の施策に関連して、HRテクノロジーの活用が求められています。

今夏、経済産業省と東京証券取引所が「DX銘柄」の選定を開始しました。選定された企業は、DX活用に対して実績をあげ、企業価値の向上に取り組んでいる企業です。企業の成長やDX活用には人材戦略が密接に関わっています。それに伴い、今後、HRテクノロジーを活用する人材マネジメント変革が求められてくるでしょう。

 

●人事DXを実現する経営体制

HRデータを活用した世界の先進企業では、CHRO(Chief Human Resource Officer/最高人事責任者)がCEOやCFOと連携した経営体制を、G3(Group of 3)と呼んでいます。G3は経営会議とは別に、経営の議論を密に行っています。データを持っていなかった時代には、こういった経営の議論に人事部門が参加することはありませんでした。データを持つようになったことで、人事部門も経営の議論に加わり、経営戦略に影響を与えられるようになってきました。

CHROと人事部長の役割はまったく異なります。CHROは経営チームの一員で経営責任があります。人事部長は経営チームの方針のもと、人事部門のオペレーションを担うリーダーです。

(セミナー当日資料:岩本隆氏 作成)

HRデータの活用ポイントとしては、主にデータ、分析方法、アウトプットがあります。どのようなデータを整備すべきか、分析手法は何を用いるのか、何を目的にどのようなアウトプットを出すべきかを考えていきます。

各企業での目的にあわせて、データの種類や内容、分析手法、レポート方法などを考えていきます。そして、人事DXを推進するためには、経営と人材マネジメント、そしてテクノロジーが融合・連携していく必要があります。

(セミナー当日資料:岩本隆氏 作成)

 

●SOCIETY 5.0で注目されるジョブ型雇用

続いてIGSの福原が、SOCIETY5.0時代の戦略人事について話しました。

世界で人事のDX化が進みHRレポートが求められている状況で、日本にもすぐにその波はやってくるでしょう。5年後、10年後を見据えた経営戦略や人材マネジメントを考えておくことが大事です。

人事のDX化に際し、足元で議論されていることの一つに、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用があります。

ジョブ型雇用は欧米に多い労働契約のスタイルで、業務に必要なスキルを持っている専門家を雇用します。一方、従来の日本に多いメンバーシップ型雇用は、様々な職種に適応する総合的な人材を求めています。新卒一括採用で、緩やかな年功序列の報酬制度です。

これまではメンバーシップ型でも日本の企業は成長していましたが、時代が急速に変化しているなかで社内の人材では対応できないこともでてきます。そのため高度な専門スキルを持つ人を採用する動きが生まれてきています。

 

●日本版ジョブ型雇用

ジョブ型雇用が増えているといえども、欧米のスタイルをそのまま日本で運用するには困難が生じることもあるでしょう。専門スキルを持ち能力報酬で雇用されながらも、会社の風土に合う人材であることも求められます。また、既存の社員の活用もあります。雇用を続けながらイノベーションを生み出す人材へと育成していくことが必要となっていきます。日本版ジョブ型雇用は、欧米のスタイルを部分的に取り入れて運用されるでしょう。

専門スキルを持っていてもそのスキルが陳腐化してしまった場合、人材を入れ替えるのが欧米型です。一方、専門スキルが陳腐化しても新たなスキルを身に着けられる人材を確保するのが日本で行われているジョブ型雇用です。

日本でジョブ型雇用を成功させるには、人材をスキルや業績だけで評価するのではなく、スキルを身に着けられるコンピテンシー(発揮されている行動特性)を重視することです。

 

●両利きの経営で求められるコンピテンシー

これからの企業経営には、探索と深化の両利きの経営が求められます。探索とは、試行錯誤しながら様々なチャンスを作り発展させていくスタイル。深化は、計画を立てて深堀したり改善したりするスタイル。従来の日本は深化のタイプが多いです。イノベーションを起こすには、探索と深化の両方を使った両利きの経営が必要なのです。

両利きの経営に必要なコンピテンシーは、創造力や個人的実行力、組織への働きかけなどがあります。しかし、これらは見た目にはわかりにくいため評価しづらいのです。そのため、コンピテンシーをデータ化して見えるようにする必要があります。

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

 

●コンピテンシー評価の内容

IGSが開発している人材評価ツール「GROW360」では、コンピテンシーを360度の多面評価を用いて、客観性、信頼性の高い手法で計測・分析することができます。

測定項目としては、解決意向や外交性、創造性、共感・傾聴力など最大で25項目があります。これらはグローバルに活躍する人材に必要な、普遍性の高いコンピテンシーであり、国際的な研究結果をもとに定義しています。強み弱みの判定でなく、例えば自社のメンバーが深化タイプなのか探索タイプなのかの傾向を見たり、部署ごとの特徴や成果を出している人、組織の特徴を明確にしたりすることが可能です。

同業他社や競合企業とのビッグデータ比較を行うことができ、自社のメンバーが業界内でどのような位置づけなのかを把握することができます。

 

●HRデータ活用のポイント

HRデータの活用のポイントとしては、継続的にデータをアップデートしていくことです。5年に1度程度の見直しでは、その時に必要なデータが得られず、人材戦略のみならず経営戦略の判断材料になりません。数年で陳腐化してしまうスキルを計測するのではなく、人材の基礎となるコンピテンシーを把握できる項目を、必要なタイミングでアップデートしていくのです。

評価者のトレーニングも大事です。適正に評価できなければ、せっかく取ったデータも有効活用できません。360度評価で注意すべきことは、人が人を評価しているという点です。人によるバイアスや甘辛で適正でない評価をテクノロジーで補正することは可能です。しかし、コンピテンシーの重要性や評価バイアスについて理解を深め、評価のばらつきを抑え、評価スキルを上げることに取り組んで、初めて組織の力になります。

GROW360は採用から配置・評価・育成までの一連のステップをサポート。HRテクノロジーを用いて企業様の課題解決をサポートしています。

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

 

■講師のプロフィール

岩本隆氏

東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータを経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。人材領域のビッグデータ解析、人工知能技術応用の研究者として、ご活躍中。ICT CONNECT 21理事・GIGAスクール構想推進委員会委員、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、「HRテクノロジー大賞」審査委員長等々を兼務。

 

福原正大

IGS(株)創業CEO。慶應義塾大学経済学部特任教授、東京理科大学客員教授、経済産業省クリエイティブ人材育成特別委員。

現三菱UFJ銀行に入行、企業留学生として、INSEAD(欧州経営大学院)にてMBA、グランゼコールHEC(パリ)にてMS(成績優秀者)、筑波大学博士(経営学)を取得。

世界最大級の運用会社ブラックロック社で最年少マネージングディレクター、日本法人の取締役を経て、2010年IGS株式会社を創設。2016年より、人工知能とビッグデータを活用して、採用や企業の組織分析を行う「GROW」をサービス開始。