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コロナ禍で加速するデータドリブン人事と三井住友信託銀行の実例

#コンピテンシー #GROW360 #人材育成

 

コロナ禍でDX化が急速に進む中、「データドリブン人事」という言葉が注目されています。そこで、Institution for a Global Society株式会社(IGS)は具体的な活用方法を紹介する「事例から学ぶデータドリブン人事セミナー」を、8月25日にオンラインで開催しました。

IGS創業CEO 福原正大が「コロナ禍で加速するデータドリブン人事と事例」をテーマに講話しました。事例紹介では、三井住友信託銀行人事部人材育成チーム調査役 小篠岳志氏に「三井住友信託銀行が実践する、人材の能力を可視化し伸ばす取り組み」をテーマに、GROW360を使った人材育成についてお話しいただきました。

セミナーには様々な業界の人事部門担当者が参加。今回は、このセミナーの模様をご紹介します。

 

●先行き不透明な今、注目を集めるジョブ型雇用

IGSの福原は、「コロナ禍で加速するデータドリブン人事と事例」をテーマに話しました。

社会やビジネスが急速に変化する昨今。将来の予測が難しくなっているVUCA※時代では、世界と戦える人材やスキルが急速に変化しています。加えて世界的なコロナ禍。急速にデジタルトランスフォーメーション(DX)へと向かっています。そこで注目されているのがジョブ型雇用です。

ジョブ型雇用とは、スキルを重視した人材採用や雇用のスタイルで、主に欧米に多くみられます。スキルが通用しなくなった人材を積極的に入れ替えることで、常にビジネス環境に合った組織を生み出します。しかし日本では、この人材の入れ替えが容易ではありません。そのため日本版ジョブ型雇用は、スキルだけでなく、変化適応可能なコンピテンシーを持ち合わせているかを考慮した人材採用や雇用スタイルをとっています。スキルが陳腐化しても、次に求められるスキルを社員にすぐに身に着けてもらうことで、雇用を維持するのです。

VUCA時代では、ビジネスで求められるスキルは約4年で陳腐化するという状況があります。新しいスキルを身に着けてアップデートしていくには、能力の基礎となるコンピテンシーが大事です。

※VUCA…volatility(変動性)、uncertainty(不確実性)、complexity(複雑さ)、ambiguity(曖昧さ)の頭文字をとって「VUCA」と表記。将来の予測が困難な状態を指しています。

 

●客観的なコンピテンシーが重要な理由

スキルが陳腐化しても新しいスキルを身に着けるためのコンピテンシーがあれば、その人材は変わることができます。

しかし、コンピテンシーは客観的に評価しづらく、主観的な見方や先入観などのバイアスがかかってしまう可能性が大きため、評価が難しいです。さらに、コンピテンシーが高い人でないと、評価ができないという側面もあります。客観性を担保しながらデータ化していくことで、コンピテンシーは初めて活用できるのです。

極端な例では、服装が社風に合っていないため評価が低い社員がいたとします。その社員は、創造性や外交性が高くイノベーションを起こすコンピテンシーを持っている場合もありますが、評価する人によっては見過ごされてしまうかもしれません。

データを使って客観的に把握し可視化することで、自社にどんなコンピテンシーを持った人材がいるのかがわかります。データがあることで、自社の戦略に沿ってどのような人材を採るべきかを判断する材料にできるのです。

 

●いま持っているデータは活用できない

企業の人事部では、以前から様々なデータを集め分析しています。そのため、多くの人事部の方々は「データは昔から取っているよ」「うちにはたくさんデータがあるよ」とおっしゃいます。しかし、多くの場合、それらのデータは活用できません。

社会は日々変化し、求められるスキルやコンピテンシーも大きく変わっています。また、評価制度が刷新されるとそれ以前の評価データは活用できません。そのため、今、企業で持っているデータは、残念ながら活用できないものが多いのです。

ビックデータやAIなどが実務として活用された10年前頃から、必要なデータの「質と量」が大きく変わってきました。それに伴い、データの「分析力」も高いレベルが求められるようにもなり、かつテクノロジーの急速な進歩がそれを可能にしてきています。

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

 

●データドリブン人事でできること

データドリブン人事でできることは、採用、配置、評価、育成と幅広くあります。IGSが提供するGROW360を例に、各ステップでの取り組み内容をご紹介しましょう。

「採用」では、採用精度の向上から工数削減の支援を実施しています。「配置」では、適性配置の実現や埋もれてしまっている人材の発掘が該当します。全体最適をどう実現するかを支援しています。「評価」では、能力評価の実現、バイアスを軽減した納得度の高い評価の実現、評価者の評価傾向の可視化と評価者トレーニングなどがあります。「育成」では、人材特性に合わせた育成法の提示や成果につながる重点育成項目の可視化、研修などの効果測定など成果につながる育成体制の構築を支援しています。

各企業が持っている課題を解決するには、課題に合わせてどのようなデータが必要かを見極め、データを取得し蓄積していきます。

 

(セミナー当日資料:福原正大 作成)

 

●事例紹介:ある大手企業の課題と施策

ではここで、IGSがサポートしているある大手企業様の事例をご紹介します。

この企業様が持っている課題は、

  1. 達成可能な目標を設定しがちになっている。そのため、チャレンジする気風が薄くなっている
  2. 社内では優秀な人材でも競合他社や他業界で比較した場合、勝てる人材のレベルになっているか不明
  3. 定性評価を導入する場合、社員に納得感があるか不明

などがありました。

これらの課題に対してIGSが提案したデータ活用の施策は、

  1. グレードごとに、求める行動と紐づいたコンピテンシー評価項目を定義する
  2. 他社ベンチマーク比較を可能にする、汎用性の高い「GROWコンピテンシー」を活用する
  3. 環境の変化に適応するために、評価項目アップデートの仕組みを導入する

です。

これらのデータを使って自社の人材の状況を把握することで、

 ・社内で共通認識が生まれる

 ・自社の強みや弱みが明らかになる

 ・高めるべきコンピテンシーが明確になる

 ・人事戦略や経営戦略の施策立案の材料が得られる

などが成果として得られると考えています。

 

●「人材育成No.1金融グループ」を目指して

三井住友信託銀行では、2017年より弊社のGROW360を導入し、人材育成の場面で活用しています。人事部人材育成チーム調査役 小篠岳志氏より、導入のきっかけから実施状況、今後の展望についてお話しいただきました。

当社は金融グループにおける「人材育成No.1」「人材活躍No.1」を掲げて各種施策に取り組んでいます。信託銀行の精神として、お客様お一人おひとりに寄り添うということがあります。人事戦略としても、「一人ひとりに寄りそう」ことが重要だと考えています。

 

●社員一人ひとりに自らの「非認知能力」を把握してもらう

現在、当社の従業員は単体で約15,000名です。対して、それを支える人事部門のメンバーは限られています。社員と向き合う中で、一人ひとりにあわせたアドバイスができているのか、効果的な研修を実施できているのかといった課題意識を持っていました。このような状況下で、GROW360の存在は問題解決の糸口になる可能性があると考えました。

資格や学業成績等には表れにくく、数値化しにくいものの、成果に繋がる大きな要素と言われる「非認知能力(コンピテンシー)」を可視化し、伸ばす方法を提供することができれば、社員の成長に貢献できるのではないかと考えました。まずは社員一人ひとりに自分の特徴を知ってもらうために、GROW360を導入しました。

 

●GROW360の活用で実現したいこと

当社は9つの事業領域と本部機能を持っています。事業によっては、まるで別の会社であるかのように感じられるくらい幅広い業務を有し、求められるスキルやコンピテンシーも異なります。GROW360を活用することで、業務に必要なコンピテンシーは何かを、認識する機会にすることができます。

また、SDGsやDX推進は企業として取り組むべき事柄です。GROW360には、そうした事業推進に必要な項目も測定できます(分かりやすい項目では「地球市民」など)。どのように施策に活かしていくかはこれからの課題ですが、現状を数値で把握することには、一定の価値があると考えています。

 

●階層別研修でGROW360を実施

若手層・中堅層・一部のシニア層を対象とした階層別研修の事前課題として、GROW360を受検してもらいました。研修当日は、受検結果の読み解き方の講義、業務を通じた能力の伸ばし方についてワークシートを使った学び、参加者同士でのディスカッションを行いました。

こうした取り組みを通じて、現在の業務で得意なことや苦手なことに対して、自分のコンピテンシーがどのように関わっているのかが見えてきます。

参加者からは「自分のことがよくわかった」「苦手分野も伸ばしていきたい」などの声が届いています。また、研修後に分析結果を上司や同僚に共有した人からは、「上司とのコミュニケーションが増えた」「自分のことを理解してもらえた」「上司や同僚に相談しやすくなった」といった反響もありました。

まだまだ手探りで、育成施策への展開を検討している段階ですが、コンピテンシーを伸ばすための推薦図書の紹介なども通じて、能力開発のヒントを社員に提供しています。

 

●今後の取り組み

これまでGROW360を使って、一定の情報を蓄積することができました。今後、情報量がさらに増えることで、育成施策の実施に関してより確信度が高い判断を下せると考えています。

データベースの整備やコンピテンシーに応じた研修施策の提供、特定のテーマに対する育成施策の立案などに取り組みながら、より大きなパラダイムシフトにも対応できる人材が育つ環境を整えていきたいと考えています。

 

■登壇者のプロフィール

小篠岳志氏 (右写真)

三井住友信託銀行・人事部人材育成チーム調査役

2006年に三井住友信託銀行に入行され、法人営業、外国債券ファンドマネージャー、国内債券ファンドマネージャー、ロンドン支店で航空機ファイナンスなどを歴任された後、2018年5月に人事部・人材育成チームに着任され、ご活躍されています。

   

福原正大

IGS創業CEO、慶應義塾大学経済学部特任教授

現三菱UFJ銀行に入行、企業留学生として、INSEAD(欧州経営大学院)にてMBA、グランゼコールHEC(パリ)にてMS(成績優秀者)、筑波大学博士(経営学)を取得。

世界最大級の運用会社ブラックロック社で最年少マネージングディレクター、日本法人の取締役を経て、2010年IGS株式会社を創設。2016年より、人工知能とビッグデータを活用して、採用や企業の組織分析を行う「GROW」をサービス開始。